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                                                               真砂沢
通算山行
報告者
加藤秀子
年 月 日
2003年6月7日(土・晴)
二万五千図
山  名
北ア・真砂岳(2860m)〜真砂沢
体力度=4・やや厳しい 技術度=登山、スキーとも4・やや難しい 危険度=真砂沢のコルに大きな
クレバス 展望度=素晴らしい
初見の真砂沢は素晴らしいカール
コースとタイム
扇沢7:30〜室堂9:20→雷鳥沢10:30→真砂岳13:40→真砂沢のコル14:2
0―真砂沢ヒュッテ15:15(泊)
標 高 差
上り・雷鳥沢〜真砂岳=約600m(つぼ足歩行)下り・真砂沢のコル〜真砂沢B・C
=約1010m(スキー滑降)
参 加 者
CL・後藤隆徳(56)、加藤秀子(54)
 
 昨夜、富士をPM7:00に出発し、扇沢にはPM10:30着。まだガラガラの駐車場の脇に車を止め、直
ぐ眠りに入る。満天の星が明日の天気を約束してくれるかのように輝いていた。
 朝、目覚めると車の台数がかなり増え、よく見ると車のシートを倒しただけで仮眠をしている人達が
多い。まだ起きだすには早いが、ザックの整理もあるし思い切ってシュラフを抜け出た。肉キムチでご
飯を食べ牛乳を飲んで、最後にバナナで仕上げ。その頃には駐車場も人の声で賑やかになる。
 ザックの重量は軽量化をしてCL18.5K。加藤16K。これにスキー板を担ぐと、ゆうに20Kは超え
た。肩にズシリとくる重みに、溶雅山以来、久々の手応えのありそうな、厳しい山行になりそうだと期
待に胸が高鳴る。始発を待つ間、並んでいる人達と雑談しながら周りをみるが、テン泊山行のような
大きなザックは私達だけだった。トロリーバスからロープウェィ、そしてトロリーバスと乗り継いで室堂
着。
 昨年の八ッ峰登攀から約8ケ月後の剣岳への再訪だ。今年は雪が多いと聞く。室堂はまだ雪に覆
われ、板を手に抱えたまま歩き出した。なるべくアップダウンを避けるため、雷鳥沢より別山乗越まで
の通常の尾根より、3つ手前の尾根に焦点を合わせ、右手の雄山の斜面をトラバース気味に滑る。
そこからの急登は板を担ぎ、アイゼン、ピッケルのつぼ足登行だ。
 前を行くCLの足が、眼の前という急傾斜に、滑り落ちないよう思いっきり雪を蹴りこむ。雪の切れた
所から、尾根に上がろうとしたが背丈以上もある這い松帯に阻まれて身動きできない。泳ぐようにして
掻き分けるが、尾根板は引っかかり、足元は枝がユラユラと動き、身体が前に後に振られる。やっき
りして本当に「このクソーッ」と叫びたい所だった。これではとても歩けないと、尾根を乗越してその先
の沢筋に入る。
遥か遠くに真砂岳が見えた。それをを見やりながら「これでは時間がかかり過ぎ、まともに着かない。
1回下まで降りて、正規の道を登った方が早いんじゃないか。、どうする?」とCLから提案があった。
私は唸って考えた。下からの登り返しはきつそうだ。上を見ると、確かに真砂岳までは長いが、稜線
まで上がってしまえばアップダウンが少ない気がして、「せっかく此処まで登ったのに、下って又苦しい
思いをするよりは、上に向かいたい」と伝える。
 そして再び急登に喘ぐ。1〜100まで何回、何百回と数えた事やら。やっと稜線に着いたときはもう勘
定も忘れて無心になっていた。しかし現金なもので、平になると急に元気になる。雷鳥沢にはスキー
ヤーがワンサカと蟻の如くに見える。稜線は雪がなく、可愛らしい黄色の花が咲いていた。(ダイコン
ソウ?)真砂岳で一服後、コルまで降りて、真砂沢の滑りだしを探すが、いきなり大きなクレパスに阻
まれ、少し先まで足を伸ばし其処からの滑降となった。
いよいよだ。出だしは急だから慎重にと言ってCLが消えた。「サァ出発だ!」迷わず勢いつけて雪を
蹴る。アッ雪がいい。引っかからない。そう感じたら、もう飛ばす。飛ばす。超サイコーだ。視野に華麗
に雪上を舞うCLの姿を捉えた。「サイコーだね。気持ちいいねぇ」と大きな声で咆哮した。段々と狭ま
る沢の面白さ、急激に落ちる斜面にも、滑るに関してはザックの重さも気にならない。少し前かがみ
で、ウンチングスタイルも何のその。滑れればいいんだ・・・と居直る。最後にしてサイコーの滑りが楽
しめた。
 剣沢の出合いにぶつかり、真砂の小屋に到着。屋根がほんの少し顔を覗かせ、夏のイメージは全
て雪の下だった。小屋の横手、雪のない土がむき出したところにテントを張る。昨年、CLが長岡と三
の窓にきた時も同じ所だったらしい。其のとき、CLがこしらえた水場もチャンとそのまま残っていて、
雪を溶かす手間が省けて燃料の節約にもなった。
 濡れたものを干し、食事にかかる。重い思いをして持ち込んだ焼き肉を食べながら、泡の立つビー
ルで乾杯!「う・ま〜い。」背負った甲斐があるってもんだ。舌鼓をうちながら、今日を振り返っている
と、雨がポツリ、ポツリと落ち始めた。場所をテントに移動したとたん
大雨となり、ゴロゴロ・ドッカ〜ン!ピカッ!ドッシャ〜ん!と、耳元で生のドラムを叩いているような大
きな雷音が始まった。昨年の八ツ峰のテン泊もそうだったなぁ。今これなら明日は雨あがるなぁ・・・と
腹が満腹になると瞼がさがり、いつの間にかウトウト寝てしまったらしい。ハッと気がついた時は、既
に真っ暗で外は星が煌々と輝いていた。
明日は午前1時起床。2時半出発。1日の行程は今までよりも厳しい。と、そのままシュラフにくるまっ
た。寒くなかったのが有難い。